東京地方裁判所 昭和45年(特わ)1032号 判決 1971年4月24日
被告人
1本店所在地
東京都千代田区内神田一丁目九番一三号
柿沼金属精機株式会社
(右代表者代表取締役柿沼富二郎)
2本籍ならびに住居
東京都新宿区本塩町八番地一
会社役員
柿沼富二郎
大正四年一一月一二日生
被告事件
法人税法違反
出席検察官
上田政夫
主文
1 被告会社柿沼金属精機株式会社を罰金三五〇〇万円に、被告人柿沼富二郎を懲役一年二月にそれぞれ処する。
2 被告人柿沼富二郎に対し、この裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告会社柿沼金属精機株式会社は、東京都千代田区内神田一丁目九番一三号に本店を置き、銅・真鍮・アルミニウム等の非鉄金属の材料および加工品の販売等を営業目的とする資本金一、九〇〇万円の株式会社であり、被告人柿沼富二郎は、被告会社の代表取締役として同会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人柿沼は、被告会社の業務に関し法人税を免れようとくわだて、売上の一部を除外して簿外預金を蓄積する等の不正な方法により所得を秘匿したうえ、
第一、 昭和四二年二月一日から同四三年一月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が二二四、〇三八、一五一円あつたのにかかわらず、同四三年三月二六日東京都千代田区神田錦町三丁目二一番地所在所轄神田税務署において、同税務署長に対し、所得金額が七七、〇九八、九〇六円でこれに対する法人税額が二五、九五七、五〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて同会社の右事業年度の正規の法人税額七七、三八五、五〇〇円と右申告税額との差額五一、四二八、〇〇〇円を免れ
第二、 昭和四三年二月一日から同四四年一月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が二八七、八九六、八八四円あつたのにかかわらず、同四四年三月二七日前記所轄神田税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一一一、〇六四、四四五円でこれに対する法人税額が三七、五五八、五〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて同会社の右事業年度の正規の法人税額九九、四四九、三〇〇円と右申告税額との差額六一、八九〇、八〇〇円を免れ
第三、 昭和四四年二月一日から同四五年一月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が二四二、七一五、六五六円あつたのにかかわらず、同四五年三月二七日前記所轄神田税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一一四、五一二、六二五円でこれに対する法人税額が三八、七四六、七〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて同会社の右事業年度の正規の法人税額八三、六一七、四〇〇円と右申告税額との差額四四、八七〇、七〇〇円を免れ
たものである。(なお右各所得の内容は別紙一ないし三の各修正貸借対照表のとおりであり、各税額の計算は別紙四の税額計算書のとおりである。)
(証拠の標目)(かつこ内は立証事項であり、数字は別紙一ないし三の各修正貸借対照表の勘定科目の番号である。)
一、 登記官作成の昭和四五年五月二三日付登記簿謄本二通(全般)
一、 次の者の検察官に対する供述調書
1 柿沼文吉(全般)
2 高橋博(昭和四五年一二月九日付)(全般、特に一の11 31、二の9 11 36、三の8)
3 高橋博(昭和四五年一二月一四日付)(二の11、三の8)
4 石井彌八(全般)
一、 大蔵事務官作成の次の調査書
1 銀行預金残高および受取利息調査書(一の41131、二の4、三の4)
2 東京芝浦電気株式会社に対する売掛金残高調査書(一の5、二の5、三の5)
3 簿外手形調査書(一の6、二の6、三の6)
4 簿外交際費支出状況調査書(一の26、二の30、三の29)
5 交際費の損金不算入額調査書(自42・2・1至43・1・31)(一の26)
6 交際費の損金不算入額調査書(自43・2・1至44・1・31)(二の30)
7 交際費の損金不算入額調査書(自44・2・1至45・1・31)(三の29)
8 法人税額計算書(一の30)
一、 株式会社三井銀行本店営業部乾恒幸作成の回答書(二の11、三の8)
一、 検察事務官作成の捜査報告書(一の30、二の35、三の37)
一、 神田税務署長作成の証明書(一の19 20、二の21 22、三の18 19)
一、 押収してある法人税確定申告書四綴(昭和四六年押四一五号の1)(全般)
一、 大蔵事務官の被告人柿沼に対する昭和四五年六月五日付質問てん末書(一の11 31、二の9 36)
一、 被告人柿沼作成の歎願書(一の11 31、二の9 36)
一、 被告人柿沼の検察官に対する供述調書(全般)
一、 被告人柿沼の当公判廷における供述(全般)
(法令の適用)
判示各事実は被告人柿沼につき法人税法一五九条に、被告会社につき同条、同法一六四条一項にそれぞれ該当するところ、被告人柿沼につきいずれも所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪なので、被告人柿沼につき同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重をし、その刑期の範囲内で、被告人柿沼を懲役一年二月に処し、被告会社につき同法四八条二項により各罪所定の罪金額を合算し、その金額の範囲内で、被告会社を罰金三、五〇〇万円に処し、被告人柿沼に対し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予する。
よつて主文のとおり判決する。
(裁判官 松本昭徳)
別紙一 修正貸借対照表
柿沼金属精機株式会社 昭和43年1月31日
<省略>
<省略>
別紙二 修正貸借対照表
柿沼金属精機株式会社 昭和44年1月31日
<省略>
<省略>
別紙三 修正貸借対照表
柿沼金属精機株式会社 昭和45年1月31日
<省略>
<省略>
別紙四 税額計算書
柿沼金属精機株式会社
<省略>